第六感を突き抜ける!才能が溢れる羊毛造形アーティスト太田光美さん

「私は情の深い合理主義者です」と語る彼女は第六感を突き抜けるほど才能に溢れています。
羊毛をはじめとしたマテリアルをつかい、リアルな動物を制作する。
音楽、料理、ファッションなど幅広い分野で活躍する太田光美さん、登場!
羊毛造形アーティスト 太田 光美

興味のWi-Fiは常にON、興味があることはすぐに試す

──自己紹介をお願いします

太田 羊毛造形アーティストの太田光美と申します。主に⽺⽑をつかって生物モチーフの造形作品をつくっています。ペットをモチーフにした作品のオーダーも一部制作していますが、基本はアート作品がメインで最近ではリボンと⽺⽑のコラボ作品なども手がけています。

──なぜ、羊毛やフェルトで制作を始めたのですか

太田 5年前にテレビで羊毛作品を見かけて、「リアルでかわいいな」と思ったことがキッカケです。ぬいぐるみとの違いに、興味をひかれました。ちょうど姉にプレゼントを探していたので、「姉が飼っている犬をモデルに制作すれば絶対喜ぶ」と思い、インターネットで作り方や材料を調べて始めました。

──かなりリアルな作品で、本当にすばらしいです。たくさんの作家さんと出会いましたが、その中でも特に高く評価しております。作品のアイデアはどのように降りてくるのでしょうか

太田 過去の記憶からきていると思います。お花や自然、動物、すべて見てきたものです。いろいろなものを目にして、ある日、作品として思いつくような感じです。

──部屋に光美さんの作品を置くと、空間にすんなり入りますね

太田 もともと生け花をやっていたので、線とか空間に興味があります。あとは、自分が「かっこいい部屋に置きたい」と思えるものをつくりたいです。フェルトは原始的なものというか、スタイリッシュやモードからかけ離れている素材というイメージが一般的にあるので。

──かなりモードな作品ですよね。作品を通してモードな印象をすごく受けます

太田 モードの方へ近づきたいですね。『Interview』や『ハイファッション』などの雑誌にすごい興味があって、テレビ番組では『America’s Next Top Model』というモデルのオーディション番組が好きです。ただ美しい人だけがモデルになるわけではなく個性が重要で、ファッションやメイクなどを含め、モデルになる子たちがどう上がっていくのか、トータルの世界観に興味があります。

──作品からファッションもパッションも感じます。今までの経験が作品に影響を与えているのですね。音楽もやっていたと伺いました

太田 打ち込み音源でジャパニーズR&Bなどの楽曲をクラブのイベントで歌ったり、インディーズでCDの全国発売をしたりしました。ブランクもありましたが、ボサノバのバンドに入ったり、ジャズギターの方とデュオをしたり、70年代洋楽ロックのお店で働いてボーカルをしたこともあります。十数年くらい音楽は続けています。

──音楽のキャリア・経験は作家になった今も生きていますか

太田 作品自体に生きてはいないかもしれませんが、制作中は音楽をずっと聴いています。イマジネーションという意味で音楽は大切です。その意味では生きています。

──音楽や生け花など多方面に才能を発揮されていますが、今の羊毛造形アーティストを選んだ理由は何かあったのでしょうか

太田 自分で言うのも何ですが、五感は鋭いと思っています。今までも五感が関係する仕事に関わってきました。羊毛造形の世界はまだ確立されておらず、天井の果てが見えていません。「世界レベルで通用するのではないか」と思いました。今までの人生を振り返ると器用貧乏というか、一般レベルよりうまくいっても世界レベルではかなわないと感じていたというか。羊毛造形は初めて、心の底から自信をもてる作品ができると感じたんです。

──今の仕事でどのような困難にぶつかりますか

太田 羊毛、フェルトはアートとして見てもらえないことですね。ハンドメイド・クラフトとして見られてしまい、値段が上げづらいです。作品に対する価値がつけてもらいづらいところは、今でも戦っていることです。

──日本ではアーティストとしての評価がつきづらいように感じています

太田 「人と同じことをすることに意義がある」とするカルチャーなので、⼈と違うことをするにはやりづらい部分は確かにあります。しかし一方で強みにもなります。私は留学経験を活かし、先に海外で経歴をつくったため仕事の話をもらいやすいこともあり、海外での経歴がいかに⼤きいかと思いましたね。

──これからはパイオニア、アーティストとして羊毛業界をアートの世界に導いていくのでしょうか

太田 私は「羊毛」に限ったスペシャリストではないと思っています。羊毛やフェルトはあくまでもマテリアルの一つでしかないということは思いの中にあります。

──豆腐と大豆で言えば、羊毛は大豆で、フェルトが豆腐ということでしょうか。

太田 そうですね、大豆は色々な形の食品に変化します。豆腐は大豆というマテリアルから作られていて、豆腐をつかった制作に特化しているわけではない、ということです。フェルトとはそもそも羊毛の繊維をからめて、シートのようにする工程を施したあとの名称であり、羊毛はあくまでその材料です。私がやっていることは、豆腐料理ではなく大豆料理とでもいうのでしょうか・・大豆をメインに、違う食材も使って一品ずつ仕上げている。違う食材としているのが、樹脂粘土やレジンだったり、最近はコラボとレーションとしてリボンと羊毛の作品もつくりました。まったく違う素材を合わせることにも、興味がありますね。

──興味のWi-Fiは常にONなんでしょうね(笑)

太田 そうなんです!興味がない情報は入ってこないし、入ってきたものはすぐに試すようにしています。英語にしても「勉強している」と思うと入ってこないけど、「コミュニケーションをとるため」という好きなことに関連していると入ってくるんです。

──「好きこそものの上手なれ」ですね

今回の個展では「個性の美しさ」を表現したかった

──海外留学もされているんですね

太田 ロンドンに1年間、留学しました。1年で10年の価値があったように思います。「1年間でこんなに変われるのか」と感じました。勉強して、アルバイトもして充実した時間を過ごしました。

ロンドンにいた頃に自分が変わったというより、日本に帰ってきて考え方が変わりました。自分の国や身内に誇りや自信を持とうと思うようになり、好きなことや個性を尊重しようというバランスが自分の中に見つかりました。

──個性的なことがネガティブなものであると考える若い人も増えていると聞いたことがありますが、その点はどう思いますか

太田 アジアの文化だと思いますが、没個性でみんなと同じことをやることを「美」としがちです。今回、3回目の私の個展では”AWAKEN”(覚醒・目覚める)というテーマで開催しました。アルビノの鹿を展示したのですが、アルビノは個性が強く自然界では天敵の目にとまりやすいことから追い出されたり、アフリカでは人間でも腕を切り落とされて呪術に使用されたりする事件があります。個性が強い故に存在が消されてしまうものだと思うんですけど、個性の美しさを出していけたらいいなと思っています。

──今後の活動はどのようにされていくのでしょうか

太田 今年は展示とオーダー作品制作で活動をしていきつつ、常にアンテナを張っておきたいと思っています。昨年からイベントに人が集まるようになったり、メディアに取材されたりする機会が増えてきたので、来年はさらに一歩進みまた海外への展開も同時にしていきたいと思っています。

──光美さんの作品を見たとき、フェルトで動物園ができるほどリアルだと思いました。本当に才能を感じるので、世界にデビューしていってもらいたいです

ロンドンの1年間があったから、今の私がいる

──ご両親の好きなところはどこでしょう

太田 ⺟は私たち⼦どものことを何より考えていて、すごく強いです。70歳を過ぎてから兄家族に会うために⼀⼈でアメリカに出かけたこともあります。⾏動⼒、エネルギーがすごいですね。

他界した父は器用で何でもできる人でした。物知りで、動物が好きで、野鳥に餌を与えるときは鳥の種類に合わせて餌を用意していました。動物や芸術、料理が好きなのは父の影響です。

──これからの夢について聞かせてください

太田 遠い先に描く夢は世界中をまわって自分の作品が目にできればいいですね。自分の好きな国をまわりながら、ミュージアムや建築のなかにある自分の作品を見てまわれるようになることが夢です。だから、今、若いうちに制作をがんばっています。

──夢を実現するためにどのような工夫をされていますか

太田 ⽬先の利益だけにとらわれず、たとえ遠回りでも芯がぶれないように意識しています。

──差し支えなければ年齢を伺ってもよいですか

太田 38歳です。

──その年ですごい悟りですね!人生をこれから折り返す人をインタビューしているように感じます

太田 私は31歳のときにロンドン留学をしました。1年間です。でも、その1年間で今の私がいます。それがなければ、今の私はいませんでした。「その年で、なんのために留学をするの?」と言われることもありましたが、帰国後に羊毛フェルトに出会い、会社を辞めて本業となっています。一般論で潰されるのではなく、努力することで何かしら返ってくるものがあると信じています。

私の作品でタコをモチーフにしたものがあります。タコの足は太い方が地に着く作品が一般的ですが、私の作品は足の細い部分が地に足をつけています。不安定のようだけどきちんと立っている、周りからは「大丈夫なの」と言われるけど「地に足をつけて立っているよ」という私のメッセージです。

またゴリラをモチーフにした作品は「真実を⾒る」というタイトルです。普段の作品は⽬にすごく⼒を⼊れて制作しますが、こちらには⽬がついていません。視覚からの情報を信じがちですが、感覚や直感を信じることも大切ではないかという私のメッセージをこめています。

──才能がすばらしいです!本日はありがとうございました